心のリザーブ

もうすぐシモンの誕生日がやって来る。
私の視線は、シモンが紙の上をなぞるペン先を追っていたけれど、頭の中は番組企画よりも彼の誕生日の計画でいっぱいだった。
私たちに共通の友人はなく、相談する相手もいない。
一見人当たりが良さそうな彼だけど、友達や家族の話は一度もしたことがなかった。
私「うーん……どうすればいいのかな？」
シモン「僕もちょうど聞こうと思っていたんだ。この集中力のないお嬢さんを、一体どうすればいいんだろうね？」
彼は企画書をなぞっていたペンで、私の頭をちょこんと軽く叩いた。その顔には、責めるような口調とは真逆の優しい笑みが浮かんでいる。
私「いえ、真面目に聞いてました。シモン教授、続けてください！」
私はびくびくしながら視線をそらした。その時、ペンではなく温かな彼の手のひらが頭に触れた。
シモン「今回の企画は面白いものになりそうだ。期待してるよ。」
私「放送日には一緒に観ようね。」
私はわくわくしながら、いつも通り彼が「うん」と言ってくれるのを待った。けれど彼は表情を曇らせた。
シモン「その時期に出張の予定があって、生放送をリアルタイムでは観られそうもないんだ。」
シモン「だから、戻ってきたあとで再放送に付き合ってくれる人はいるかな？」
疑問形だったけれど、その微笑んだ瞳には確信めいたものが感じられた。
私「答えはわかってるくせに……」
私「シモン、最近忙しそうだね？」
シモン「うん、かなりね。」
シモン「研究所では実験に追われているし、たまの休みは（プレイヤー名）プロデューサー様の企画をお世話しないといけないし。」
彼はそう言いながら、大げさに肩を揉んだ。冗談っぽく言っているけれど、確かに本当のことだ。
こんな時はリフレッシュが必要だ。日々のプレッシャーから心も体も解放すべきだと、私は考えた。
（これだ！やっと誕生日のヒントがつかめた！）