ゼンには私のささやかな楽しみを台無しにする能力があるらしい。ちょうど私がイチゴアイスを食べようとしていたその時、彼からの電話が私を現実へと引き戻したのだった。
きっとかけ間違いだろうけど、
ゼンはいつもと様子が違っていた。彼は「会いたい」と言ったのだ。気持ちのこもったその声には、誰もが魅了されてしまう魔法があるみたいで……
ゼンと顔を合わせたくなかったけれど、エレベーターで出くわしてしまった。今朝の電話の事を尋ねながら、あの言葉が頭に浮かび、どう話せばいいかわからない。自分の気持ちを表現する大切さや、
ゼンの彼女は綺麗で優しい人なんだろうなと伝えてみると、彼は不機嫌そうな表情をした。